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治療シリーズ①

馬場記念病院で実施するt-PA治療(血栓溶解療法)について

更新日:2025年3月1日
発信者:社会医療法人ペガサス 馬場記念病院
監修者:名前(診療科・役職)

馬場記念病院では、脳梗塞の超急性期治療としてt-PA(組織プラスミノーゲンアクチベーター)を用いた血栓溶解療法を実施しています。脳梗塞は、脳の血管が詰まり血流が途絶えることで脳細胞がダメージを受ける疾患であり、放置すると重篤な後遺症が残る可能性があります。そのため、発症後できるだけ早く血流を回復させることが重要です。t-PA治療は、発症後4.5時間以内の脳梗塞患者さまを対象に、血栓を溶かして血流を再開通させることで、神経症状の改善を図る治療法です。
馬場記念病院では、救急対応から診断、治療、リハビリテーションまでの包括的な医療体制を整え、迅速かつ適切なt-PA治療を提供しています。本記事では、t-PA治療の概要、適応条件、効果とリスク、治療の流れについて詳しく解説します。

目次

t-PA治療とは

 

<t-PA治療とは>

 

t-PA治療とは、脳梗塞の超急性期において、血栓を溶解し血流を回復させることで脳細胞の損傷を最小限に抑える治療法です。t-PAは、血液中のプラスミノーゲンを活性化し、血栓を分解する酵素を誘導する薬剤であり、発症早期に投与することで、詰まった血管を再開通させる効果が期待されます。

● t-PA治療の適応条件

馬場記念病院では、以下の条件を満たす患者さまにt-PA治療を提供しています。
・脳梗塞の発症から4.5時間以内であること。
・CT・MRI検査で脳出血がないことを確認済みであること。
・重篤な意識障害がないこと(昏睡状態ではない)。
・血圧が極端に高くないこと(185/110mmHg未満が目安)。
・最近の外科手術や消化管出血がないこと。

適応外のケースとして、高度な出血リスクがある場合、血圧管理が困難な場合、重度の脳梗塞で出血リスクが高い場合などがあります。

<t-PA治療の効果とリスク>

 

t-PA治療は、後遺症を最小限に抑えるなどの効果がありますが、一方で、出血のリスクもあるため、安全性を十分に考慮しなければなりません。

● t-PA治療の効果

t-PA治療により、血流が再開通することで、脳細胞への酸素供給が回復し、神経機能の改善が期待されます。
・脳梗塞による麻痺や言語障害の改善が期待できる。
・後遺症を最小限に抑え、日常生活への復帰を促す。
・発症から早期に治療を受けるほど、治療効果が高まる。

● t-PA治療のリスク

t-PA治療には、以下のリスクが伴います。
・脳出血のリスク(約6%)
血栓を溶かすことで、脳内出血が発生する可能性がある。
・全身の出血リスク
消化管出血、皮下出血、鼻出血などが発生することがある。
・アレルギー反応
まれにt-PA投与による薬剤アレルギーが報告されている。

馬場記念病院では、治療のリスクを最小限に抑えるため、投与前の適応判断を慎重に行い、投与後も厳密な管理を実施しています。

t-PA治療の流れ

 

<検査と診断>

 

t-PA治療は時間との勝負ですので、治療が安全かつ有効に行えるかを判断するため、CTやMRIなどの画像検査をはじめ、血液検査や問診などを迅速かつ丁寧に実施します。
・救急搬送(発症から4.5時間以内)
・FASTテスト(顔・腕・言葉・時間)の実施
・頭部CT・MRI検査で脳出血の有無を確認
・血液検査で凝固異常や腎機能のチェック
・問診により既往歴や服薬歴の確認

馬場記念病院では、患者さま一人ひとりに最も適した治療を提供できるよう、検査体制を整えています。これらの検査結果をもとに、t-PA治療の適応判断を行っています。

<治療の流れ>

 

t-PA治療が適応されると、静脈へのt-PAの投与が開始されます。治療後は厳重な血圧管理や再検査による経過観察が必要です。

● t-PAの投与(静脈内点滴)

・アルテプラーゼ(t-PA)を体重に応じた適切な量で静脈から投与する。
・投与時間は約60分(初回ボーラス投与後、残りを1時間かけて点滴)。

● 治療後の管理(急性期対応)

・t-PA治療後の24時間は、集中管理室(ICU)または脳卒中ケアユニット(SCU)で厳重な経過観察を行う。
・脳出血のリスクがあるため、血圧管理を厳格に実施する(180/105mmHg以下を維持)。
・再度、CT・MRI検査を行い、治療効果と出血の有無を確認する。
・リハビリテーションチームと連携し、早期回復のためのプランを作成する。

馬場記念病院では、t-PA投与後の集中管理とリハビリテーションの早期介入を通じて、患者さまが安心して治療に臨み、日常生活への復帰を目指せるよう包括的な支援を行っています。

まとめ

監修者プロフィール

名前

診療科・役職

●職種・資格

医学博士
日本脳神経外科学会 指導医
近畿脳神経外科学会 評議員
日本脳卒中学会 指導医

●メッセージ

脳神経外科ではありますが、全例手術を行うのではなく、状態、症状に対して、確実かつ適切な治療を行います。また、外来診療のみでなく、救急でも即座に対応できるような体制をとっています。

よくある質問

 t-PA治療は、以下の条件を満たす場合に適用されます。
● 発症から4.5時間以内であること
● 画像検査(CTやMRI)で脳出血がないことが確認される
● 重度の腎機能障害や出血傾向の病気がないこと
● 最近(過去数週間以内)に大きな手術や出血を伴う処置を受けていないこと

医師が患者さまの状態を総合的に判断し、t-PA治療の適応を決定します。

 t-PA治療後は、集中治療室(ICUやSCU)で厳重に経過観察が行われます。
● 血圧の管理(高血圧になると出血のリスクが高まるため、厳格にコントロール)
● 神経症状の変化の確認(症状が悪化しないかをこまめにチェック)
画像検査(CTやMRI)で脳出血の有無を確認

治療後の24時間以内は安静が必要で、医療スタッフが細かく状態を観察します。

 t-PA治療の適応外だった場合、以下の治療法が検討されます。
● 血栓回収療法(発症6時間以内、場合によっては24時間以内)
カテーテルを使って脳の血栓を直接取り除く方法で、t-PA治療と併用できる場合もある。
● 抗血小板薬・抗凝固薬の投与
血液を固まりにくくする薬を使用し、脳梗塞の進行を抑える。
● 血圧管理や全身管理
血圧を適切にコントロールし、脳へのダメージを最小限にする。

t-PA治療が適応外でも、他の治療法で症状を改善できる可能性があるため、医師と相談しながら最適な治療を受けることが重要です。

<お知りになりたいことを、お問い合わせください>

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