障害シリーズ①
更新日:2025年3月1日
発信者:プロジェクトリンクト事務局
監修者:名前(病院名・診療科・役職)
脳卒中(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血)は、突然発症し、後遺症として運動機能障害を引き起こすことが多い病気です。
運動機能障害は、手足の麻痺や筋力低下、バランス感覚の喪失などを伴い、日常生活に大きな影響を与えるため、適切なリハビリテーションが必要となります。本記事では、運動機能障害の基礎知識、生活への影響、リハビリテーションの基本、ご家族の役割について詳しく解説します。
運動機能障害とは、脳や神経、筋肉に異常が生じ、身体の自由な動きが制限される状態を指します。脳卒中による運動機能障害は、損傷部位や症状の重症度によって異なりますが、主に以下のような症状が見られます。
・片麻痺(へんまひ)
体の片側(右半身または左半身)の運動能力が低下する。
・筋力低下
手足の力が弱くなり、細かい動作や歩行が困難になる。
・協調運動障害
両手や指の細かい動作、バランスを取る動作が難しくなる。
・痙縮(けいしゅく)
筋肉が異常に緊張し、手足がこわばって動かしにくくなる。
・歩行障害
歩行が困難になり、転倒のリスクが高まる。
これらの障害は、症状の種類や程度によって異なりますが、リハビリテーションを行うことで改善する可能性があります。
運動機能障害は、日常生活のさまざまな場面で影響を及ぼし、生活の質(QOL)が低下する要因となります。
・食事
箸やスプーンが使いづらく、食事をこぼしやすい。
・着替え
ボタンを留める、ファスナーを上げる、靴を履くなどの動作が困難になる。
・入浴
浴槽への出入りが難しくなる。
・排泄
トイレの便座への移動が困難になり、介助が必要となることがある。
・歩行
屋内外の移動に支障をきたし、転倒リスクが高まる。
・仕事
デスクワーク(パソコン操作、筆記)、立ち仕事などが難しくなる。
・外出
公共交通機関の利用が難しくなり、外出機会が減る。
・家事
料理や掃除、洗濯などの家事を自力で行うことが困難になる。
・喪失感
「以前はできたことができなくなった」と感じる。
・社会的孤立
外出の機会が減ることで、社会とのつながりが薄れる。
・うつや意欲低下
回復の見通しが立たないことへの不安を抱えることがある。
精神的な落ち込みや社会的な孤立も生じやすいため、身体面の回復だけでなく、心のケアや周囲の理解や支援も重要です。
リハビリテーションは、脳卒中の回復段階に応じて進め方が異なります。できるだけ早い段階から始め、回復のステップに合わせて段階的に取り組むことで、機能の回復につながります。
・関節拘縮(こうしゅく)を防ぐためのストレッチ
・座る・立つ訓練
バランス感覚を回復する。
・歩行練習
杖や歩行補助具を活用する。
・筋力トレーニング
衰えた筋肉を鍛える。
・日常生活動作(ADL)訓練
食事・着替え・トイレ動作の練習をする。
・歩行訓練
平地歩行から段差歩行へ移行する。
・日常的に運動を取り入れ、在宅リハビリテーションを継続する。
・デイケアや訪問リハビリテーションを利用する。
・杖や装具を活用しながら生活の質を維持する。
リハビリテーションは、医師・理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)などの専門職が連携して行うことが基本です。
ご家族の支援は、患者さまの意欲や生活の安定に大きく関わります。環境を整え、無理のない介助を心がけることが患者さまの回復を後押しします。
・手すりの設置、段差の解消
移動をスムーズにする。
・椅子やベッドの高さ調整
立ち上がりやすくする。
・滑りにくい床材やマットの使用
転倒防止を心がける。
・できるだけ自立を促す
手助けしすぎない。
・励ましの声掛け
できたことを評価する。
・家族自身の負担を減らす
介護サービスを活用する。
・訪問リハビリテーションやデイケアを利用する。
・障害者手帳や介護保険を活用し、支援を受ける。
・レスパイトケアの活用など、ご家族自身も無理のない介護を心がける。
リハビリテーションは長期にわたることが多いため、ご家族の支えがとても大切です。利用できるサービスや制度を上手に活用しながら、ご家族の負担を軽減していきましょう。
監修者プロフィール
診療科・役職
●職種・資格
医学博士
日本脳神経外科学会 指導医
近畿脳神経外科学会 評議員
日本脳卒中学会 指導医
●メッセージ
脳神経外科ではありますが、全例手術を行うのではなく、状態、症状に対して、確実かつ適切な治療を行います。また、外来診療のみでなく、救急でも即座に対応できるような体制をとっています。
リハビリテーションによってある程度の回復は可能ですが、完全に元の状態に戻るとは限りません。回復の程度は、脳の損傷の範囲や部位、発症からリハビリテーション開始までの時間、リハビリテーションの継続状況によって異なります。特に発症後早い段階でリハビリテーションを始めると、脳の可塑性(神経回路の再編成)を活かして機能の回復を促すことができます。リハビリテーションは、運動療法、電気刺激療法、装具の使用など、さまざまな方法を組み合わせて行われます。
運動機能障害があると、歩行や立ち上がり、食事、着替え、入浴、トイレ動作などの基本的な日常動作が難しくなります。そのため、ご家族や介護者の支援が必要になる場合があります。例えば、手の動きが不自由だと、ボタンを留める、箸を使う、靴を履くなどの細かい作業が難しくなります。また、歩行が困難になると、自力での外出が難しくなり、外出頻度が減ることで社会参加の機会が制限されることもあります。仕事や趣味の継続が難しくなる場合もあり、生活の大きな変化を伴います。
運動機能障害を悪化させないためには、リハビリテーションを継続することが最も重要です。発症後の早い段階で適切なリハビリテーションを始めることで、筋力の維持や関節の可動域を確保しやすくなります。また、長期間動かないことで関節が固くなる「関節拘縮」や、筋肉が異常に緊張する「痙縮」が起こることを防ぐために、適度な運動やストレッチを取り入れることが大切です。さらに、生活習慣を整え、血圧管理、食事療法、再発予防のための運動を続けることで、脳卒中の再発を防ぎ、健康的な生活を維持することができます。
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