リハビリテーションシリーズ①
更新日:2025年3月1日
発信者:社会医療法人ペガサス 馬場記念病院
監修者:名前(診療科・役職)
馬場記念病院では、脳卒中や脊髄損傷、整形外科的外傷、パーキンソン病などに起因する運動機能障害を抱える患者さまに対して、専門的な理学療法を実施しております。運動機能障害は、日常生活での歩行、立ち上がり、着替えなどの動作に支障をきたし、結果として自立生活が困難になるリスクを伴います。また、機能低下が進行すると、二次的な合併症、例えば、筋萎縮、関節拘縮、転倒による外傷の発生リスクも高まります。
当院では、多職種が連携したアプローチで、患者さま一人ひとりに合わせた個別のリハビリテーションプログラムを提供し、機能回復および生活の質(QOL)の向上を目指しています。本記事では、運動機能障害に対する理学療法の基本的な考え方、期待される効果と伴うリスク、実際の治療プロセス、及び退院後のサポート体制について、詳細にご説明します。
運動機能の低下によって日常生活が制限されると、心身の状態にも影響が及びます。こうした課題に対し、理学療法が重要な役割を果たします。理学療法は、身体機能の回復、維持、向上を目的とした医療行為であり、個々の患者さまの障害や体力レベルに応じた運動プログラムを提供する治療法です。
・筋力強化訓練
低負荷の筋トレ、ストレッチ、関節可動域訓練を通じて、筋力の低下を防止し、必要な筋力を回復させる。
・バランストレーニング
重心移動や姿勢制御の訓練を行い、転倒予防と歩行の安定性向上を図る。
・歩行訓練
杖、歩行器、補助具を使用した歩行練習を通じて、自立歩行の能力を回復させる。
・持久力向上訓練
軽度の有酸素運動(例:室内ウォーキング、エアロバイク)を取り入れることで、心肺機能の向上を目指す。
・温熱療法
ホットパック、パラフィン浴などにより血流を促進し、筋肉のこわばりを和らげる。
・電気刺激療法
筋肉の再教育、神経機能の活性化、痛みの緩和を目的として、低周波や電気パルスを用いる。
・低周波治療
痛みや炎症を軽減するための治療法として、筋肉や関節に対して行う。
・患者さまの体の状況に合わせて、歩行補助具(杖、歩行器など)や矯正用の装具を適切に選定し、使用方法の指導を行う。
・これにより、患者さまがより自立した動作を行えるよう支援する。
馬場記念病院では、患者さまの身体状況や目標に応じて治療内容を柔軟に調整し、無理なく継続できるリハビリテーションを安全に提供しています。
理学療法には、筋力や歩行能力の改善、痛みの軽減といった効果が期待されますが、転倒や過負荷などのリスクにも注意が必要です。
当院の理学療法により、以下の効果が期待されます。
・筋力と関節可動域の向上
適切な運動療法により、筋肉の強化や関節の柔軟性向上が期待できる。これにより、日常生活動作(ADL)の改善が見込まれる。
・歩行能力の改善
バランストレーニングと歩行訓練を組み合わせることで、自立歩行の促進と転倒リスクの低減が図れる。
・痛みの軽減
物理療法や運動療法の併用により、筋肉や関節の緊張を緩和し、慢性的な痛みを軽減させる。
・心肺機能の向上
有酸素運動による持久力の向上が、全身の健康状態の維持に寄与する。
一方で、理学療法には以下のようなリスクが伴います。
・転倒や外傷のリスク
リハビリテーション中にバランスを崩し、転倒や外傷を引き起こす可能性があるため、必ず安全な環境で実施する。
・過度な運動負荷による痛みの悪化
無理な運動は、筋肉や関節に負担をかけ、痛みや炎症を引き起こす恐れがあるため、運動強度は個々の体力に合わせて慎重に調整する。
・心拍数・血圧の変動
特に心疾患を有する患者さまでは、運動中の心拍数や血圧の急激な変動に注意し、モニタリングを行う。
馬場記念病院では、患者さま一人ひとりの体調やリスクを十分に評価した上で、最適な理学療法プログラムを提供し、安全性を最優先に治療を進めています。
馬場記念病院では、入院から退院後のフォローアップまで一貫したリハビリテーションプログラムを提供しております。
以下は、その具体的な実施手順です。
① 初期評価(入院時)
・医師による診断
脳卒中やその他の原因による運動障害の診断が行われ、治療の基本方針が決定する。
・理学療法士による評価
筋力、関節可動域、歩行能力、バランス機能、ADL(生活動作)の状態を詳細に評価する。
・患者さまとの面談
リハビリテーションの目標(例:「歩行の安定化」、「自立した移動の回復」など)を共有し、治療計画を立案する。
② 入院中のリハビリテーション
・個別の運動療法
患者さまの状態に応じて、筋力強化、ストレッチ、バランス訓練、歩行訓練などを実施する。
・物理療法の併用
温熱療法や電気刺激療法を用い、痛みの緩和や血流促進を図る。
・ADL訓練
ベッドからの起き上がり、座位・立位、歩行など、日常生活動作の基本的な動作訓練を行う。
・装具や補助具の導入
必要に応じて、歩行補助具や支援装具の適正な選定と使用方法の指導を実施する。
③ 退院前の準備
・在宅環境の評価と改善提案
退院後の安全な在宅療養環境を整えるため、家具配置のアドバイスや転倒防止対策(手すり、滑り止めマットなど)の指導を行う。
・ご家族への介助指導
移乗や歩行介助の方法、日常生活でのサポート方法を具体的に説明する。
・外来リハビリテーションの計画立案
退院後も継続してリハビリテーションを受けられるよう、外来通院または訪問リハビリのスケジュールを決定する。
段階的なアプローチにより、患者さまの状態や目標に応じて柔軟に内容を見直しながら、安心して取り組めるようにしています。
退院後も、患者さまが自宅で安全に生活できるよう、馬場記念病院では以下のサポート体制を整えております。
・外来リハビリテーション
定期的な外来でのリハビリテーションにより、運動機能の維持と向上を図る。
・訪問リハビリテーション
自宅にて専門の理学療法士が訪問し、運動指導やADLのサポートを行う。
・介護保険サービスとの連携
デイケアや通所リハビリテーション施設の利用を促し、在宅でのリハビリテーションを補完する。
・定期的な健康チェック
リハビリテーションの効果や患者さまの健康状態を定期的に評価し、治療プランの見直しを行う。
退院後も医療・介護サービスと連携し、生活の質を保ちながら、患者さまが安心して自宅で過ごせるよう支援を続けています。
馬場記念病院では、運動機能障害に対する理学療法を、入院時の評価から退院後のフォローアップまで一貫して実施しています。
このプログラムにより、患者さまは筋力やバランスの回復、歩行能力の向上が期待でき、日常生活での自立度が大幅に改善されます。また、退院後の外来リハビリテーションや訪問リハビリ、介護保険サービスとの連携により、患者さまとご家族が安心して療養を継続できる環境を提供しております。
リハビリテーションに関するご相談は、当院のリハビリテーション部または地域連携室までお問い合わせください。馬場記念病院は、患者さまとご家族が安心して生活できるよう、最適な理学療法プログラムを提供し、継続的なサポートを行ってまいります。
監修者プロフィール
診療科・役職
●職種・資格
医学博士
日本脳神経外科学会 指導医
近畿脳神経外科学会 評議員
日本脳卒中学会 指導医
●メッセージ
脳神経外科ではありますが、全例手術を行うのではなく、状態、症状に対して、確実かつ適切な治療を行います。また、外来診療のみでなく、救急でも即座に対応できるような体制をとっています。
退院後のリハビリテーション期間は個人の回復状況によりますが、最低でも6ヶ月〜1年間は継続することが推奨されます。特に、脳卒中後の回復は発症から3〜6ヶ月が最も重要な時期とされており、その後も定期的なリハビリテーションを続けることで、機能の維持やさらなる回復が期待できます。
可能な範囲で行うことは推奨されますが、安全性に十分配慮する必要があります。
特に転倒のリスクがあるため、ご家族のサポートや手すりの設置を考慮しながら行うことが重要です。また、定期的に理学療法士や医師のアドバイスを受け、正しい方法で実施しているか確認することが大切です。
回復には個人差があり、一時的に停滞することもありますが、継続が重要です。
以下の対策を検討するとよいでしょう。
● 現在のリハビリテーションを内容が適切かを見直す(専門家に相談)
● 小さな目標を設定し、達成感を持つ(「毎日5分続ける」「10歩歩く」など)
● 日常生活でできる動作を意識する(歯磨き時の立位保持、座る・立つ動作の工夫)
● モチベーションを維持するためにご家族のサポートを活用する
回復のスピードは人それぞれですが、続けることで確実に改善の可能性は高まります。
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