治療シリーズ②
更新日:2025年3月1日
発信者:社会医療法人ペガサス 馬場記念病院
監修者:名前(診療科・役職)
馬場記念病院では、不整脈の治療として「カテーテルアブレーション治療」を実施しています。カテーテルアブレーション治療は、不整脈の原因となる異常な電気信号を発生する部位を高周波電流または冷凍エネルギーで焼灼(しょうしゃく)または凍結し、心臓の正常なリズムを回復させる治療法です。特に、心房細動(AF)、発作性上室性頻拍(PSVT)、心室頻拍(VT)などの不整脈に対し、高い治療効果が期待できるため、薬物療法で十分な効果が得られない患者さまに推奨されます。
馬場記念病院では、専門的な設備と経験豊富な医師による高度なカテーテルアブレーション治療を提供し、患者さまの生活の質(QOL)の向上を目指しています。本記事では、カテーテルアブレーション治療の概要、適応条件、効果とリスク、治療の流れについて詳しく解説します。
カテーテルアブレーション治療は、心臓の異常な電気信号を発生させる部位を特定し、その部分を焼灼または凍結することで不整脈を根本的に治療する方法です。
この治療は、薬物療法で改善しない不整脈や、頻繁に発作が起こる不整脈に対して適応となります。
・心房細動(AF)
心房が不規則に震え、脈が速くなる。
・発作性上室性頻拍(PSVT)
突然心拍が速くなるが、短時間で自然に戻る。
・心房粗動(AFL)
心房が非常に速く規則的に震える。
・心室頻拍(VT)
心室で異常な電気信号が発生し、脈が速くなる。
・WPW症候群(ウォルフ・パーキンソン・ホワイト症候群)
異常な伝導路が原因で頻拍が起こる。
・薬物療法で十分な効果が得られない方
・発作が頻繁に起こり、日常生活に支障がある方
・心房細動が持続し、脳梗塞のリスクが高い方
・若年者で、長期的な薬物療法を避けたい方
馬場記念病院では、患者さまの不整脈の種類や重症度を総合的に判断し、カテーテルアブレーション治療の適応を慎重に決定しています。
カテーテルアブレーション治療は、特定の不整脈に対して高い治療成功率を誇りますが、まれに合併症が起こる可能性もあるため、慎重な対応が必要です。
・心房細動の治療成功率は約70~80%(追加治療を行うことでさらに向上)である。
・ 発作性上室性頻拍・WPW症候群は90%以上の治癒率が見込める。
・薬を継続する必要がなくなる可能性がある。
・脳梗塞や心不全のリスク低減が期待できる。
・心臓穿孔(せんこう)
カテーテル操作による心臓の壁の損傷
・血栓・塞栓症
カテーテルによる血栓形成が脳梗塞を引き起こす可能性がある。
・肺静脈狭窄
心房細動のアブレーション後に起こることがある。
・迷走神経障害
一時的な嚥下障害や声枯れが起こる場合がある。
馬場記念病院では、高度な技術を持つ専門医が治療を担当し、手術前後のリスク管理を徹底することで、安全な治療を提供しています。
カテーテルアブレーション治療の実施にあたっては、不整脈の種類や重症度を的確に把握するために、複数の検査を組み合わせた慎重な診断を行います。
・心電図検査(ECG)
不整脈の種類を特定する。
・ホルター心電図(24時間心電図)
日常生活中の不整脈を記録する。
・心エコー(超音波検査)
心臓の構造異常や血栓の有無を調べる。
・経食道心エコー
心房細動による血栓形成を詳しく調べる。
・造影CT・MRI
心臓の血管や肺静脈の形態を評価する。
・問診
既往歴や服薬歴を確認し、治療適応を判断する。
馬場記念病院では、詳細な検査と診察を通じて治療の適応を慎重に見極め、患者さまにとって最適かつ安全な治療につなげています。
カテーテルアブレーション治療は、入院から手術、術後管理まで正確かつ安全に実施されます。術後の再発予防と経過観察も、長期的な治療成果に欠かせない要素です。
・入院(通常2~3日間)
・経食道心エコーで血栓がないことを確認
・抗凝固療法を事前に調整
・局所麻酔を行い、カテーテルを足の付け根(大腿静脈)または首(鎖骨下静脈)から挿入
・電気マッピングで異常な電気信号の発生部位を特定
・高周波アブレーションまたは冷凍アブレーションで異常部位を焼灼または凍結
・心電図で不整脈が抑制されたことを確認し、治療完了
・治療後4~6時間は安静を保つ(止血確認)
・翌日、心電図・心エコーで異常がないか確認
・退院後も約1~3ヶ月間、抗凝固薬を継続し、再発予防
馬場記念病院では、治療前後に丁寧な説明を行い経過観察を徹底することで、患者さまが安心して治療を受けられるよう、チーム医療でサポートを行っています。
監修者プロフィール
診療科・役職
●職種・資格
医学博士
日本脳神経外科学会 指導医
近畿脳神経外科学会 評議員
日本脳卒中学会 指導医
●メッセージ
脳神経外科ではありますが、全例手術を行うのではなく、状態、症状に対して、確実かつ適切な治療を行います。また、外来診療のみでなく、救急でも即座に対応できるような体制をとっています。
治療中は局所麻酔や鎮静剤を使用するため、ほとんどの患者さまは強い痛みを感じません。ただし、カテーテルが血管を通るときの圧迫感や、焼灼時の軽い熱感を感じることがあります。術後は一時的に違和感や軽い痛みが出ることもありますが、通常は数日で軽減します。
治療後も心房細動が再発することがあります。特に治療後の数ヶ月間は、心臓の組織が修復される過程で一時的に不整脈が発生することがあります(これを「ブランク期間」といいます)。この期間を過ぎても症状が続く場合は、追加治療が必要になることもあります。
再発を防ぐためには、医師の指示に従いながら生活習慣の改善を心がけることが重要です。
多くの場合、抗凝固薬(血液を固まりにくくする薬)はしばらく継続する必要があります。これは脳梗塞のリスクを低減するためです。また、抗不整脈薬やβ遮断薬についても、治療後の経過によっては継続する場合があります。
医師の指示に従い、自己判断で薬を中止しないようにしましょう。定期的な診察を受けながら、必要に応じて薬の調整を行います。
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