ケアシリーズ①
更新日:2025年3月1日
発信者:社会医療法人ペガサス 馬場記念病院
監修者:名前(診療科・役職)
馬場記念病院では、長期間の入院や在宅療養を行う患者さまに対し、専門的な褥瘡(じょくそう)ケアを提供しています。褥瘡は、長時間同じ姿勢を取り続けることで、皮膚や組織が圧迫され、血流が低下することで発生する皮膚の損傷です。特に、寝たきりの方や、自力で体位を変えられない方は発症のリスクが高く、適切なケアを行わないと、感染症や組織壊死につながる可能性があります。当院では、医師・看護師・管理栄養士・理学療法士・作業療法士など、多職種が連携した「褥瘡ケアチーム」を組織し、科学的根拠に基づいた褥瘡の予防と治療を実践しています。また、入院中のケアだけでなく、退院後の在宅ケアについても指導を行い、患者さまが快適に過ごせるようサポートしています。本記事では、褥瘡の基本的な知識、当院で行う専門的ケアの内容、治療の流れ、そしてご家族の役割について詳しく解説します。
褥瘡とは、持続的な圧迫によって血流が途絶え、皮膚や皮下組織が壊死してしまう状態を指します。健康な方であれば、自然に寝返りを打つことで、皮膚の同じ部分に圧力がかかり続けることを防いでいます。しかし、寝たきりの方や、長時間車椅子に座っている方など、体位を変えることが困難な方は、一定の部位に圧迫がかかり続けるため、褥瘡ができやすくなります。
褥瘡は、症状の進行度に応じて以下のように分類されます。
・Ⅰ度(発赤期)
皮膚が赤くなり、押しても色が戻らない。痛みや熱感を伴うことがある。
・Ⅱ度(浅い潰瘍期)
表皮が剥がれたり、水ぶくれができる。傷が浅いが痛みを伴うことがある。
・Ⅲ度(深い潰瘍期)
皮膚が完全に失われ、脂肪層が露出する。感染リスクが高まる。
・Ⅳ度(壊死期)
皮膚の奥の筋肉や骨まで損傷し、黒く壊死することがある。
褥瘡は、以下のような要因によって発生しやすくなります。
・持続的な圧迫
長時間ベッドに横たわっている方や、車椅子を使用している方は、臀部や背中、かかとなどに圧力がかかり続けるため、血流が滞りやすくなる。
・摩擦やずれ
体を引きずるように移動する際、皮膚がこすれて損傷しやすくなる。また、姿勢が不安定な状態でずり落ちると、皮下組織が引っ張られて傷ができやすくなる。
・栄養不良
低栄養の状態では、皮膚や筋肉の再生能力が低下し、褥瘡が発生しやすくなる。特に、タンパク質・ビタミンC・亜鉛の不足は、創傷治癒を遅らせる要因となる。
・循環障害
糖尿病や心疾患を持つ方は、血液の流れが悪くなりやすく、褥瘡の治りも遅くなる。
・皮膚の湿潤
尿や汗による皮膚のふやけが原因で、皮膚がもろくなり、褥瘡ができやすくなる。
褥瘡の進行段階やリスク要因を丁寧に評価することで、患者さま一人ひとりの状態に合わせた予防とケアが行えます。
馬場記念病院では、褥瘡に対して包括的なケアを行っています。多職種がチームを組み、患者さまの状態に合わせて予防から治療まで一貫したケアを提供しています。
馬場記念病院では、多職種が連携し、包括的な褥瘡ケアを行っています。
・看護師
創傷ケア、体圧分散、体位変換、スキンケアを担当
・管理栄養士
栄養評価を行い、創傷治癒を促す食事プランを提案
・理学療法士・作業療法士
体位変換の指導、寝返り動作の訓練、座位姿勢の調整をサポート
このように、褥瘡ケアチームが中心となってアプローチすることで、患者さまの治癒力を高め、安全で質の高い褥瘡ケアを実施しています。
褥瘡の発生や悪化を防ぐためには、入院中から適切なスキンケアや体圧分散、栄養管理を行うことが重要です。早期の対応が鍵になります。
・体圧分散の徹底
エアマットレスの使用、2時間ごとの体位変換
・スキンケアの実施
皮膚の清潔保持、保湿ケア、摩擦防止
・創傷管理
適切な被覆材の使用、感染予防
・栄養サポート
高タンパク・高カロリー食の提供
・リハビリテーション
血流促進を目的とした軽度の運動
馬場記念病院では、入院中の患者さまに対し、科学的根拠に基づいて予防と治療の両面から褥瘡ケアを実践し、症状の軽減と回復を目指した支援を行っています。
退院後も、適切な褥瘡ケアを続けることが大切です。馬場記念病院では、ご家族が無理なくケアを行えるよう、退院前に指導を行っています。
・体位変換のタイミングを決める
食後やテレビのCMの間など、日常生活に組み込む。
・皮膚の観察を習慣化する
毎日の着替え時にチェックする。
・食事管理を工夫する
不足しがちな栄養素を意識し、栄養補助食品を活用する。
また、訪問看護やリハビリテーションを活用することで、在宅でも専門的なケアを受けることができます。
馬場記念病院では、褥瘡の予防と治療に専門的な体制を整え、患者さまが快適に過ごせるよう支援しています。訪問看護や褥瘡ケアについてのご相談は、病院の患者相談窓口までお問い合わせください。当院は、患者さまとご家族の負担を軽減し、より良い療養環境を提供してまいります。
監修者プロフィール
診療科・役職
●職種・資格
医学博士
日本脳神経外科学会 指導医
近畿脳神経外科学会 評議員
日本脳卒中学会 指導医
●メッセージ
脳神経外科ではありますが、全例手術を行うのではなく、状態、症状に対して、確実かつ適切な治療を行います。また、外来診療のみでなく、救急でも即座に対応できるような体制をとっています。
こまめな体位変換(2時間ごとが目安)を行い、圧力がかかる部分を変えましょう。エアマットやクッションを使って圧を分散することも大切です。皮膚は常に清潔にし、保湿を行うことで傷つきにくくなります。また、バランスの取れた食事と十分な水分補給を心がけ、皮膚の健康を保ちましょう。
患部を清潔に保つため、生理食塩水または水道水を十分に使って洗浄します。洗浄時は、強い水流やこすり洗いを避け、優しく流すようにしましょう。汚れがひどい場合は、滅菌ガーゼや専用の洗浄剤を使ってやさしく拭き取ります。洗浄後は、清潔なドレッシング材で適切に保護してください。
使用するドレッシング材の種類によりますが、一般的には2~3日に1回の交換が推奨されます。ただし、浸出液が多くガーゼやドレッシング材が湿っている場合は、細菌の繁殖を防ぐためにも早めに交換しましょう。交換の際には、傷口の状態を観察し、赤みや悪化がないか確認することも大切です。
<お知りになりたいことを、お問い合わせください>
● あなたの不安に寄り添います
医療情報ナビゲーション