難治性皮膚疾患は、患者さまの生活の質(QOL)を大きく損なう病気の一つです。 症状が長引き、治療が困難なケースが多いこれらの疾患に対し、当院の皮膚科ではさまざま治療法を取り入れ、地域医療を支えています。
これまでの治療は、ステロイドの塗布や局所注射が中心でした。しかし、最近登場した「JAK(ジャック)阻害薬」という錠剤は、全身の症状に効果を発揮する新薬です。患者さまの生活を改善する大きな可能性を秘めていますが、副作用を慎重に監視する必要があります。そのため、当院では血液検査やX線CTなどの画像診断を行いながら安全に治療を進めています。
当院の消化器科では、2024年6月より「消化管出血コール」 を導入しました。このシステムにより、消化管出血の疑いがある患者さまへのより迅速な治療が可能となりました。地域の 医療機関の先生方や救急隊の皆さまから、ダイレクトで消化 器科医に連絡できますので、ぜひご利用ください。
皮膚疾患の中でも、特に患者さまの生活に影響を及ぼ すのがアトピー性皮膚炎です。最近ではバイオ医薬品(生物学的製剤)の選択肢が増え、乳幼児にも対応可能な治療が進化しています。 18歳未満の方は、医療費が公費でカバーされますので、重症例の方はご相談ください。
遺伝性血管浮腫(HAE)は、顔や喉などが急に腫れ、 喉が腫れると窒息の危険があります。この疾患は遺伝性が強く、診断が遅れることが課題です。血液検査で確定診断後、血液製剤やカリクレイン阻害薬で治療・予防が可能です。侵襲的治療時には予防薬を使用し、早期診断と適切な対応でQOLの改善が期待されます。
膿疱性乾癬は、乾癬の中でも重症で、発熱や全身の炎症を伴う場合があります。これまでの治療法では症状を完全にコントロールするのが困難でしたが、バイオ医薬品 (生物学的製剤)が登場したことで、治療効果が飛躍的に向上しました。特に、発熱を伴う急性期の治療においては、迅速な効果が期待できます。
難治性皮膚潰瘍は、循環障害や基礎疾患が原因で治癒が難しい疾患です。一部では悪性腫瘍が関与するため慎重な診断が必要です。治療は原因特定後、圧迫療法や感染管理を行い、適切なケアで症状悪化を防ぎます。
ファブリー病はX染色体連鎖性の希少疾患で、発汗困難や四肢痛、皮膚血管腫が特徴です。放置すると腎不全や心不全、脳梗塞を引き起こす可能性がありますが、酵素補充療法が有効です。早期診断と若年期からの治療で合併症を防ぎ、長期的な健康維持が可能です。家族歴の確 認も重要です。
馬場記念病院は2次救急を担う医療機関として、皮膚科領域の救急疾患にも積極的に対応しています。 蜂窩織炎や筋膜炎、ウイルス性疾患などは、早期の診 断と治療が重症化を防ぐカギとなります。特に筋膜炎のような進行の早い疾患では、迅速な対応が患者さまの命を救うことにつながります。当院では10月か ら3名体制で皮膚科救急に取り組み、地域の皆さまが安心して医療を受けられる環境を整えています。どんな小さな症状でもお気軽にご相談ください。
皮膚科部長深井 和吉